シェアハウスと商店街のはなれ
名古屋市西区の商店街の隅にある、築 60 年超の町屋の改修計画。東隣に建つ2棟のシェアハウスと同じ施主による 3 期目の計画である。この町屋は数年前に 4 軒全て空き家となり、老朽化から解体も検討されたが、既存のシェアハウス入居者 13 人 +21 人のための、新たな交流の場として利用できないかと依頼を受けた。また、6 年近く幾度と敷地を訪れるなかで感じた、店の閉鎖による街の衰退を印象づける商店街の「空隙」に対しても、2 棟のシェアハウスと共に、新たな交流の場が商店街にプラスに作用するきっかけになると期待し、シェアハウス入居者と近隣住民の交流の場としての設えも計画する。解体すれば「空隙」となってしまう町屋の一部を、木造フレームが残された建築とも呼べない “建築未満” とし、振舞いの手がかりとする。地方都市商店街の活性化というと大げさだが、シェアハウス入居者の交流の場が街へにじみ出ることで、賑わいが生まれることを期待している。
・既 存 の 木 造 フ レ ー ム を 利 用 す る 改 修 案。基 礎 や 傷 ん だ 木 材 は 補 強 し、外 壁 や 屋 根、開 口 部 は 新 た に つ く り 直 す。
・南側は木造フレームのみ残すことで、建物や庭を一体的にデザインし、シェアハウスのプライバシーを程よく保つ。
・フレームを利用し、展望デッキや階段テーブル、階段ベンチなどのデザインを新たに加え、居場所の手がかりを創り出す。
・既に解体済みの南の棟を 0 と考え、北に向けて少しずつ既存建物の痕跡が残るようなデザインとし、まちの記憶を継承する。 ・フレームに入る筋交や手すりを利用して、シェアハウス住民と地域の人が利用する領域を目立たないように自然と分ける。
住人同士のつながりから地域とのつながりへ
シェアハウスを住居として選ぶ人は、人との何かしらのつながりを求めていることが多い。今回の計画地に隣接する2棟のシェアハウスの住人も、自室で過ごす時間と同程度、自由に利用可能な共用部で過ごしている。プライベートな時間だけでなく、入居者同士が許容できる範囲で仕事場として利用するものも少なくない。また、それぞれのコミュニティと同時に、棟を超えた交流も積極的に行われている。2棟に挟まれた中庭は、彼らの交流の場となり、入退去の際の歓送迎 B.B.Q. や家庭菜園での野菜づくりワークショップなどが定期的に行われている。さらに彼らの交流範囲はシェアハウス内にとどまることなく、地域のマラソンイベントや自治体行事などへの参加を、シェアハウスの OB、OG らと共にしている。1 棟目の竣工から 8 年を迎え、成熟してきたシェアハウスの新たな交流の場として、商店街に面した既存町屋を有効利用し、地域の活性化を図りたいというのがオーナーの希望である。
所在地:愛知県名古屋市 |
構造・規模:木造・2階建て |
用途:店舗・多目的室・地域交流スペース |
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